今回は専門家の方が多く、発表者でないのにも関わらず、緊張しました… |
そんな中、先日3月4日に第5回一橋中国法セミナーが開催されました。今回のテーマは刑法です! 今回は武漢大学から熊琦先生をお呼びして、中国刑法の現状についてお話していただきました!
右:今回の主役の熊先生、左:通訳の葉晶珠さん |
熊先生は中国刑法学の大御所、馬克昌先生の最後のお弟子さんで、ドイツ留学などから大陸法と中国法の比較を通して中国刑法の研究をしていらっしゃいます。今回は中国刑法の犯罪の定義である「社会的危害性」と大陸法側の比較、世論の声に判決が左右される「メディア裁判」、そして訴えてもなかなか起訴に至らない「立案難」について解説していただきました。
ホワイトボードに説明を書き込む但見先生 |
まず、我々日本や欧米諸国の刑法(大陸法の刑法)における犯罪の定義は、「構成要件に該当する違法で有責な行為」と理解されています。それに対して、中国は儒教の伝統的な考え方とソビエト刑法の影響で、犯罪を①「社会危害性のあるもの」と捉え、それに付随して②「刑事違法性のあるもの」、③「刑罰を受けるべき可能性」を考慮した上で犯罪かどうかを認定しています。
「社会的危害性」の特徴としては、その行為の危害性について社会が判断できること、法的なアプローチよりも実質的アプローチの方を重要視する点にあります。つまり、法解釈によって論理的な判決を導き出せても、世論の反応が厳しければより厳しい判決が下るケースもあるということです。よって裁判官は①純粋な法解釈と、②実質的に妥当かどうかの2つから考え、後者の方を優先して判決を出すという仕組みになっています。よく中国の法律の不安定性について議論されますが、それはただ単に行政の力が強いから、というだけでなく、以上のような刑法論にも原因があります。もう一つは、数字というハードルを重視している点にあり、一定の基準(例えば賄賂であれば~元から、など)を超えて初めて「社会危害性のあるもの」として判断するところに特徴があります。
途中から通訳は但見先生に交代しました |
実質的理解として犯罪を「社会危害性のあるもの」と捉えている中国では、メディアの声が裁判官の判断基準の一つとして作用します。具体例としては、飲酒運転によるひき逃げ事故を行った警察官がメディアによって大々的に報道され、死刑になった張金柱事件などがあります(参照:「中国の刑事裁判における「メディア裁判」現象の法文化的背景」)。メディア裁判は、民衆の怒りを収めるためのガス抜きとして機能していますが、同時に法的安定性が問題になっています。
次に問題になるのが、「立案難」。中国では「社会危害性」を判断できるのが法律の専門家のみでないことから、警察官に起訴する権限が与えられています。 そのため、例えば犬が逃げ出して他の人を傷つけた場合など、法的に判断したら犯罪と判断できるものを警察官が取り扱ってくれないなど、中々事件を起訴(立案)に持ち込めないという問題が生じています。
今後中国刑法学はこういった問題に対してしっかり対処するため、今後も大陸法を学んで近づいていく必要があると結論を出して熊先生の話は終わりました。
日米中の刑法ご専門の王雲海先生の解説 |
刑事弁護で有名な村岡啓一先生 |
塚田農場の店員さんによる粋なサービス |
セミナー終了後の飲み会、熊先生と共に… |
以上セミナーのレポートでした!飲み会では日本語と中国語が入り混じった面白い空間になり、店員さんも中国語のサービスをしてくださるなど、非常に楽しい会になりました!次回の更新は年度終わりの飲み会か、新ゼミテンが入ったあとになるか分かりませんが、今後とも但見ゼミをよろしくお願いします!
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